「治っちゃ困る」めまい患者の真実——漢方・西洋薬・心療的アプローチを語る
めまいは「治らない理由」がある人が治らない
司会: めまいはある意味、奥が深いですね。治らない人は永遠に治らないし、中には「治っちゃ困る」人もいる。
五島先生: そういうことです。その場合は「治っちゃ困る」とわかった上で診察してあげればいいんですよ。
司会: 私の診察では、「最後は死ぬまで治らないよ」と言うと、かえって治る患者さんが結構いるんですが、変ですか?
五島先生: それはあると思いますよ。病気を治そう、治そうと努力することが「病気への焦点化」になってしまい、かえって治らない。諦めが「あるがまま」を生む。素直な方はそれで気づいて「そうなんですね」となる人はいると思います。
治らない患者さんの傾向として、更年期前後の女性で「主人在宅症候群」の方、義理の家族との関係、そして障害を持つお子さんのお父さん・お母さんが挙げられました。
「子供のために頑張りすぎているのか、理由はわからないけれど、治らないんです」
漢方薬の使いどころ——抗不安薬・SSRIとの組み合わせ
司会: 先生は漢方をどんな場面で使われますか?
五島先生: 心身的な方に使うことが多いですね。耳鼻科の中でも、不定愁訴・めまい・耳鳴り・咽喉頭異常感症などで。私はどちらかというと抗不安薬や抗精神病薬が大好きで、そちらを使いたい場面が多いんですが、漢方を先に試したい方や、その薬を離脱する際に一時的に漢方を入れるという使い方をしています。
SSRIを導入する際、漢方薬を先に飲んでから入れることで吐き気が出にくくなる「インダクション的な使い方」も試みているとのことです。
五島先生: 抗不安薬から離脱するのが難しいので、最初から漢方も一緒に出しておいて、やめる時に漢方だけ残して撤退する——そういうのをちょっと試みています。うまくいかないこともありますが。
プラセボ効果と「誰が出すか」問題
司会: 大学の漢方講座のトップの先生は、先生が治せなかった患者を治せるんですか?
五島先生: 治せることもありますね。でも同じ薬だったりすることもある。「ラベル効果」というか、誰がどういう思いで出すか、ということが漢方の場合はとても強く影響していると感じます。患者さん自身が「漢方で治りたい」という気持ちが強い方は、それだけで治りやすいと思います。
司会: つまり、漢方薬と称してただの水を出しても効く人が一定数いる、ということですね。
五島先生: そういう人たちが一定数いる、ということです。
患者が診察室に入った瞬間から「先生に会えて良かった」と言い、すでに良くなっているケースも。
「また来ますって言う人って、良くなるんですけど微妙に治らないようにするんですよ。治ったら会えないから。」
漢方は「抗精神病薬への入り口」
司会: 西洋医学で治らない患者が漢方に来て、漢方でも治らない時はまた西洋薬に戻る。そういう流れになりますね。
五島先生: そうなんです。漢方が抗精神病薬への入り口になるんですよ。構成西洋薬が嫌いな患者さんも先生も、漢方で治らなければ次に進みますよね。しかも抗精神病薬はどんどん進化しているので、選択肢が増えています。
司会: 漢方も進化するものだと思っているんですが、ツムラさんが128種類の優れたエキス製剤を作ってしまったので、進歩が止まってしまった気がします。エキス製剤は「漢方の終わりの始まり」だと。
めまいの定義とレッドフラッグ
司会: そもそもめまいの定義って何ですか?
五島先生: 自分が感じている感覚と違う感覚を感じること——それが広義のめまいです。「なんか変な気がする」もめまいに入れてしまいますね。ただ正確には「身体感覚異常感」、体が動いているような感覚、が正しいめまいです。
司会: めまいが良くなったか悪くなったかも、本人次第ということですね。
五島先生: 完全に主観的なものです。レッドフラッグとしては、どんどん悪化する場合や手遅れになりかねない病気。ただ私が診るのは慢性めまいで、3ヶ月以上続いている方がほとんど。その方たちはほぼ同じ症状がずっと続いているので、レッドフラッグはほぼない状態です。
めまいの背景に隠れた「身体化」
司会: もっと深刻な病気になったら、めまいが消えることもあるんですか?
五島先生: 消えるんですよ。乳がんになったり心臓が悪くなると、めまいって言わなくなる。で、それが治るとまた戻ってくる。めまいは「中途半端な病気」なんです。でも「めまいぐらいで良かったね」とは絶対言えない——自分の存在を否定することになりますから。
「めまい」という言葉の裏に、不安や言語化できない感情が隠れていることが多い。身体化(ソマタイゼーション) です。患者さんが「めまいが、めまいが」と言う時の言い方や表情から、言葉の裏に何があるかを読み取るのが、診察の面白いところでもあります。
治らない方への次の手として、「めまい以外のことに焦点をずらす」アプローチも。
「めまいがなかったら何がしたいですか、と聞く。そこからサイコセラピーになっていくんです。」
※本記事は対談動画の字幕を基に、読みやすさのため一部整理・編集しています。








